1. 高速化推進研究活動報告の刊行にあたって

サイバーサイエンスセンター長 菅沼拓夫

東北大学サイバーサイエンスセンターは,全国共同利用施設として1969年に設置された東北大学大型計算機センターを起源としています.本センターの目的は「最先端かつ世界最大級のコンピュータシステムの導入と利用環境の構築」であり,設立以来,半世紀以上にわたって最新鋭のコンピュータ利用環境を全国の研究者に提供してきました.

計算機の揺籃期には,大型計算機センター,計算機メーカ,利用者が一体となってコンピュータのハードウェア,ソフトウェア,プログラミング言語等が開発されました.また,これら最先端の機器や技術を使いこなすために,上記3者が協力して利用環境を整備し,さらに分かりやすいマニュアルの作成やプログラミング相談,講習会等で利用技術等の普及に努めてきました.本センターは,3者によって高速化を推進することを目的とした研究会を1997年9月に立ち上げ,それ以降,高性能計算に関する共同研究を精力的に進めてきました.さらには,2014年に高性能計算技術開発(NEC)共同研究部門を新設し,本センター利用者にとって真に役立つ学術情報基盤の整備・運用・研究開発に取り組んでまいりました.

本センターを取り巻く環境は時代とともに大きく変化しています.2007年の最先端研究施設共用イノベーション事業による民間企業の利用開始,2010年の学際大規模情報基盤共同利用・共同研究 (JHPCN) 拠点認定,およびJHPCN共同研究課題の実施,2012年のHigh Performance Computing Infrastructure (HPCI)への資源提供の開始等を経て,その役割が大きく拡大しました.さらには大規模計算システムの利用目的の多様化も進み,従来からの数値シミュレーションに加えて,大規模データ処理や機械学習等の用途でも当たり前のように使われるようになっています.東北大学青葉山キャンパスの直近に建設された3GeV高輝度放射光施設NanoTerasuが2024年度から運用を開始し,そこで生じる大量なデータを蓄積・解析する役割も求められています.常に最新・最先端のシステムを運用してその高度利用技術を利用者に提供し続けるという本センターの使命を果たし続けるために,今後も利用支援や共同研究を精力的かつ継続的に取り組んでまいります.

今回お届けする「高速化推進研究活動報告第8号」は,本センターにおける利用支援や共同研究等の活動の成果をまとめたもので,2018年度から2022年度までの成果が収録されています.本報告書を通じて,本センターのこれまでの活動内容についてご理解いただくとともに,皆様のプログラムの高速化の一助になれば幸甚です.

最後に,本センターとの共同研究に積極的に参加し,目覚ましい成果を挙げていただいた本センター利用者各位,日ごろからご支援いただく文部科学省およびHPCIコンソーシアムの関係各位,および日本電気株式会社に厚くお礼申し上げます.